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zoom RSS 【高専誕生前夜】産業界の文書3

<<   作成日時 : 2006/12/30 01:43   >>

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新時代の要請に対応する技術教育に関する意見
             1956年11月8日 日本経営者団体連盟

 最近先進国における科学技術の進歩はまことに目覚しいものがあり、各国ともに第二次産業革命ともいうべき原子力産業・電子工業の勃興およびオートメーションの普及等産業技術の躍進的な向上発展に備え、技術者・技能者の計画的な養成教育に懸命の努力を傾けつつある。例えば、ソ連においては年々六万の専門技術者、七万の中級技術者を養成しているが、第六次五力年計画でこれを五割方引上げ五年間に新たに九〇万の科学者・技術者の供給を目標としている。イギリスでは現在技術系大学生の数は戦前の二倍を超えているが、明年から五力年間に新規の上級技術者を五割増加し、下級技術者・熟練工を倍増する方針を今春決定し、これに必要な施設費一億ポンド(一、〇〇〇億円)支出の措置に乗出した。アメリカでもアイゼンハウアー大統領は科学者・技術者養成委員会を設置して、ソ連に対抗する科学者・技術者の積極的な養成計画の樹立に当らしめている。然るに我が国においては、戦後教育制度の変革をみたが、技術教育の重要性は殆んど顧みられることなく、大学については理工系に対し法文系偏重の風は依然改められず、義務教育についても理科教育および職業教育の重視の実は一向に挙っていない。いまにして経済の画期的な成長発展に対応する技術者・技能者の養成計画を樹て産業技術向上の確保を図らないならば、わが国科学技術は日進月歩の世界水準に遅れをとり、列国との競争に落伍することはけだし必至の勢であり、悔を次の世代に過すものといわなければならない。
 われわれは技術教育の振興こそ一日も遷延を許さない刻下の急務であると信ずるが故に、新時代の要請に対応する産業技術教育の革新と科学者・技術者および技能者の計画的な養成のため、左記の諸点について政府の一大英断を要望してやまないものである。

一 今後の経済発展に対応する技術者・技能者の計画的養成教育
 今後五年ないし一〇年間における国内経済の拡大、東南アジア開発および科学技術の高度化の要請に対応する技術者・技能者の要員数を想定し、これを充足するに必要な専門大学の設置、法文系学生の圧縮と理工系学生の増員、工業高校の充実、勤労青少年の技能教育の刷新、小・中学校の理科職業教育の推進等について、年次目標を設定するとともに所要の経費を計上して速かに計画の実現を図ることが極めて緊要である。

二 義務教育における理科教育・職業教育の推進
 現在中学校卒業者の約半数は直ちに社会に出て職業に就き、これら就職者の半数近くは産業界に入ってその多くは一般技能工員となるが、一国科学技術振興の基盤は幼少年期における理科教育・職業教育の徹底にあるので、小学校および中学校におけるこれら教育は積極的に推進しこれが拡充を図るべきであり、これがため教員養成機関における理科・職業教育もまた刷新するとともに、一般国民の理科教育に対する認識を改め関心を高める措置を講ずべきである。

三 勤労青少年の技能教育の刷新
 (1) わが国産業の一般技術水準を高度化し、生産性向上を図るには、各業種の要請に対応する多能工・単能工の養成をさらに推進する必要があるが、現行の労働基準法による技能者養成制度は監督行政の見地に立って制定され、画一的な拘束が存するため、現在基幹的な重化学工業においてこの制度により養成している技能者の数は二万にも足らない状況である。今後産業の要請に合致した量と質の基幹工員を養成するには、この制度を積極的に助長する建前の単行法の制定されることが急務である。大企業においてはこの新立法に基いて単独に多能工・単能工の養成施設を設けることができるが、単独で企業内に養成施設をもち得ない中小企業については、共同養成方式を奨励してこれに国が助成の道を講ずるとともに、国または地方自治体が有力な技能者養成施設を設けてこれらの企業における養成を援助すべきであり、指導員の養成についても国の指導センターの設置が望ましく、養成工の格付を行うための技能検定もかような政府機関において行うことが適当であろう。なお養成工の向上心に応えるため、必要により定時制高校・通信教育とも結びつけ、高等学校修了の資格を付与する道を開いておくことが望ましい。
 (2) 企業の青少年従業員が昼間職場で労働しながら毎日夜間に普通課程の高校へ通学する定時制高校の現状は、地域的業種的に特殊な場合を除いては、一般的にいって職場の能率の見地からみても、また本人の健康の見地からみても、決して望ましいものではない。したがって昼間の職業をもつ青少年に対する定時制教育は、労働と教育とが内容的に一致するように、普通課程よりも職業課程に重点をおくこととし、また現在通信教育は普通課程のみ実施されているが、これに職業課程を加えこの職業課程の通信教育を多分に採り入れて、定時制・通信教育いずれでも随意に履修し得ることとし、定時制通学の負担を軽減すべきである。

四 初級技術者および監督者養成のための工業高校の充実
 (1) 産業界は主として中級技術者の補助者たる初級技術者および、現場作業の指導に当る第一線監督者としては、技能者出身の適任者を訓練する外、工業高校の卒業者を採用しこれを職場において養成しているが、高校においても大学と同じく普通課程と職業課程との間に均衡を失し、工業高校卒業者の数は定時制を含めても現在年約五万にすぎず、今後産業の需要を充足し得ない状況にあるので、普通課程の高校はできる限り圧縮して工業高校の拡充を図るべきである。
 (2) 工業高校の教育内容については、学校所在地域の産業の特色を充分に考慮し、必要な知識と技能を授けるばかりでなく、産業人としての人格教育・躾教育にも力点をおくべきである。戦後の工業高校生は技能においても基礎知識においても甚しく不充分であるが、これは主として年限が三年であることおよび教職員の資質の低下に因るものである。従って、効率的な初等技術教育を行うため、中学校と結びつけて六年制とし、一貫した教育を行い得るような道を拓く必要があり、また教職員の資質の向上を図るため、その再教育・人材交流等を行うとともに、学科と実習とが相互栢接に関連して一貫的な教育を授けるように配慮することが特に必要である。
 (3) 工業学校の実習施設については、職場の設備に比して甚しく遜色があるので、産業教育振興法を再検討して質量ともに内容の充実を図ることが肝要である。生徒の学外実習は現状では一般に困難であるが、教職員の国内現場留学と産業界からの講師派遣については、産業界として協力に吝かなものではない。
五 技術者養成のための理工科系大学教育の改善
 (1) 産業界においては、戦前旧制工業専門学校の供給していた中級技術者は今日の産業界においてもその必要を痛感しているが、現在二年制の短期大学では到底この要求を満足し得ない。よって二年制の短期大学を高校と結びつけ五年制の専門大学を設けその積極的拡充を図って、高校と大学との間の教育の重複非能率を是正するとともに実習、専門学科の充実を行いもって産業界の要請に即応すべきである。

 (2) 四年制大学は法文系に比し理工系が甚しく均衡を失し、学生数においても現在七五対二五の比率であって、戦前の六五対三五の比率にも達せず、将来科学技術者たるべき理工学部学生数は短期大学を含めても約八万(即ち一年約二万)にすぎない。またこれに対する国費支出の面からみても、余りに少額に失する実情である。政府は国家百年の大計に基き、計画的に法文系を圧縮して理工系(専門大学を含む)への転換を図るとともに、積極的に理工系大学に対する国庫支弁および補助の増額措置を講ずるべきである。
 (3) 工科系大学の教育内容については、新制大学四年間の専門科目の授業時数が旧制大学三年間のそれに此して約三〜四割方減少している現状に鑑み現行四年の枠内において専門科目の充実を図るとともに、学生の学外実習は原則として正科とし組織的に実施する必要がある。専門科目と併せて基礎科目の充実も大いに必要であるが、双方について完全を期待することは実際上望み難いので、むしろ各大学が所在地城の特徴、教授の陣容等によりいずれかに重点をおきそれぞれ特色の発揮に努むべきである。
 なおいうまでもなく、学校教育の目標は知識を授けるばかりでなく、人格を造ることにあるから、工科系大学において技術者倫理の徹底を図ることは極めて重要であり、また機械的技術の革新に伴い管理技術の進歩は益々著しいものがあるので、管理技術に関する科目は今後の技術者教育として忽せにできないところである。
 (4) 将来の科学技術の進歩と産業技術の高度化に即応し、理工系大学院を強化して、専門科学技術者・上級技術者の育成に努める外、産業界の委託学生の制度を修士課程において認めるべきである。
 (5) 理工系大学教職員の海外および内地留学・相互啓発等により質的向上を図るとともに産業技術の高度化に伴う産業技術者の再教育について大学側の態勢を整備することが望ましい。
 (6) 理工系大学と産業界とは絶えず緊密な連携を図り、大学側は産業界の要請を的確に把握して、これに対応する方途を考究するべきである。産業界も講師の派遣、教授の現場見学出張その他工業教育全般ならびに研究の推進についてできうる限りの協力を致さんとするものである。




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